【完】狂犬チワワ的彼氏


「じゃあな、妃由。また明日、」

「う、うん。バイバイ」



しばらくして途中で直樹と別れると、あたしはマンションに向かって歩いていた足を、ふと止めた。



「…、」



…何か、ずっと心がモヤモヤしてる。

いや、拓海くんと喧嘩中だから、これくらい当たり前なのかもしれないけど、

なんとなく…今はマンションに真っ直ぐ帰る気にはなれなくて。


今日もお兄ちゃんは女の人とデートで帰って来ないし、

あたしはマンションに続く道に背を向けると、そのまま場所を離れて駅に向かった。


…前に、龍也くんと会いに行ってからご無沙汰だったけど、まだあのコは元気にしているだろうか。


そう思って、数分後。

しばらく歩くと……



……居た。

龍也くんが内緒で可愛がっている、猫の“えいと”が。

えいとはあたしの存在に気がつくと、目を細めて“ニャー”って鳴いた。



「えいと、久しぶりだね」



しかし、あたしがそう言ってえいとの頭を撫でていると…



「あれ?妃由さん、」


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