【完】狂犬チワワ的彼氏
「!」
ふいに後ろから、そんな聞き覚えのある声がした。
この声は…龍也くんだ。
あたしがそう思って振り向くと、そこにはえいとの餌を片手に下げている龍也くんが居て。
龍也くんはあたしと目が合うと、
「妃由さんがここにいるなんて、珍しいですね」
なんて、そう言ってあたしの傍にやって来る。
「…うん。まぁ、なんとなくえいとの姿が見たくなって。龍也くんは、餌やりに来たんだ?」
「はい。毎日のこの時間は、餌をあげなきゃいけませんから」
そして龍也くんはそう言うと、小さい袋から餌を取り出して、えいとにあげた。
えいと…かーわいいなぁー。
あたしがそう思ってえいとを見つめていると、ふいに隣で龍也くんが言う。
「なんか…元気、ないですね」
「え、えいとが?そうかな、」
「違いますよ。貴女が」
「!」
そう言って、「何かあったんですか?」とあたしを見遣る。