【完】狂犬チワワ的彼氏
最初のほんの一瞬は、何をされているのかわからなかったけど。
でも、その状況は思ったよりも早く把握できた。
龍也くんにキスされてる。
それに気が付いたら、あたしは慌てて龍也くんの肩を押しやって。
喧嘩をしたあとなのに、この時に頭に過るのは、やっぱり拓海くんのこと。
少しして口が離れると、あたしは思わず呟いた。
「…な、んで…」
「…」
「なんで…だって、龍也くんは友達なのに、」
しかしあたしがそう言うと、次の瞬間、今度は龍也くんにすぐ傍の壁に押しやられる。
「!!やっ、」
突然のことに、「今度こそは」と必死で抵抗しても…無駄だった。
龍也くんはあたしの両手を掴んでそれをあたしの顔の横に押しやると、真っ直ぐに目を合わせて言った。
「…“なんで”?」
「…、」
「やっぱり、わかってないんですね。俺は、貴女のことが好きなのに」
「!!」
そう言われて、拓海くんと同じ顔で、同じ目で見つめられる。
その言葉は、拓海くんや龍也くんに前々から言われていたこと。
その時のことをすっかり忘れていたあたしは、今更ながらに思い出した。
「拓海さんなんて、いいじゃないですか。俺だったら拓海さんみたいに、貴女に酷いことは言いません。
喧嘩をして辛いなら、いっそ俺と一緒に居てみませんか?」
「!」
そう言われて、また…少しずつ顔が近づいてくる。
確かに龍也くんは拓海くんと顔がそっくりだから、瓜二つだからあたし自身も思わずドキドキしてしまって…。
でも、