【完】狂犬チワワ的彼氏
…でも、
「う、うるせぇな」
「!」
木塚くんは何故かそう言ってあたしから顔を背けると、メイク道具をコスメボックスに片付けだした。
…あれ、何か…また機嫌損ねた?
そんな木塚くんに、あたしがこっそり顔を覗き込もうとすると…
「つ、っつか早く出かける準備しろよお前」
そう言ってまた、ふいっと顔を背ける。
だけど、あたしにはほんの少しだけ見えた。
木塚くんの、ちょっと赤くなった顔が。
照れた様子が一瞬だけ視界に入って…
「…照れてる?」
思わずそう聞いたら、その時木塚くんが背中越しに舌打ちをしたのが聞こえた。
…あ、マズイ。
これ以上は構わないでおこう。
…………
それからしばらくすると、あたしと木塚くんは美容院を後にした。
でもその時、美容院の綺麗なあの女の人が見送ってくれて…
「えっと…妃由ちゃんだっけ?よかったらまた拓海と一緒においでよ」
そう言って、優しい笑顔であたしに手を振ってくれた。
「はいっ、」