【完】狂犬チワワ的彼氏
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その夜。
兄弟三人で向かい合って、静かに夕飯を食べる。
俺達には両親がいない。
去年に、二人とも事故に遭って他界したから。
そして今夜も、料理が得意な智輝が作った夕飯を食べていると、
ふと思い出したように智輝が言った。
「…あ、そういえば、拓海」
「ん?」
「例の海の話、あれどうなった?妃由ちゃん何て?」
智輝は俺にそう問いかけると、箸を持つ手を止めて俺を見る。
その問いに俺は、智輝を見ずに言った。
「…行くって」
「へぇ」
そんな俺の言葉に智輝はそう相槌を打つと、再び夕飯を食べる。
…っつか、“へぇ”って何だよ。
でも俺がそう思っていたら、今度は龍也が口を開いて言った。
「…意外ですね」
「?」
「この前、智輝さんが妃由さんに“あんなこと”をしたのに、来て頂けるなんて」