【完】狂犬チワワ的彼氏
その声に龍也の方を振り向くと、龍也が言葉を続けて言う。
「妃由さんとの、海の件なんですが」
「…なに」
「それ、俺が行ってもいいですか?」
「!」
そう言って、片腕に参考書を持ったまま俺を見る。
…何を言うかと思えば。そんなことか。
別にいいけど。
「なんで、」
俺が呟くようにそう聞くと、龍也が少し考えたあと言った。
「…考えてみれば、俺まだ妃由さんに一回しか会っていませんから」
そして、「いいですよね?」と問いかける。
そんな龍也に、俺は…
「うん、いいんじゃね?」
何も考えずに、そう言った。
「ありがとうございます、」
すると龍也はいつも通り丁寧にそう言って、自分の部屋に入って行く。
はぁ…俺も寝よ。
そんな龍也を見ると、俺もそう思って部屋に入ろうとしたけど…
“なぁ拓海、お前の彼女見せろよ”
“牧野って子だっけ?アイツ可愛いよな~。俺一回でいいから話してみたくてさ───…”
その時ふいに何故か、俺を海に誘った友達のことが脳裏を過って、俺は無意識に龍也を引き留めた。
「ッ、待った!!」