【完】狂犬チワワ的彼氏
ガシッと龍也の腕を掴むと、そいつは怪訝そうな顔で言った。
「…何ですか」
「…!」
そしてその瞬間に、俺はやっと我に返る。
…あっ、俺…!
でももう引き返せなくて、俺は掴んでいた龍也の腕を離すと、そいつに言った。
「海へは俺が行く」
「!」
「…あ、ちょっと、妃由に用があるから」
「…そう、ですか」
俺がそう言うと、龍也が心なしか表情を曇らせるようにして俺から視線を外す。
…気のせいか?
龍也は普段から明るい性格なわけじゃないけど、いつもよりも暗い気が…。
そう思っていたら、龍也がふと顔をあげてまた俺を見ながら問いかけた。
「…拓海さん、は…」
「?」
「妃由さんのこと、本当はどう思ってるんですか?」
そう問いかけて、鋭い目付きで俺の答えを待つ。
…何でそんなこと聞くんだよ。
そう思いつつも、俺は軽くため息を吐いたあと、はっきりと口にした。
「…好きだよ」