【完】狂犬チワワ的彼氏
直樹はそう言うけど、あたしはここ数日木塚くんのそれが実際頭から離れない。
双子?一人っ子?双子?……って、そればかり。
「ん~でもさ、女嫌いとか言ってるくせに妙に慣れてたり、
ってかそもそも急にあたしと付き合う気になったり、
一番は、デート帰りとか家に送ってくれなかったくせに、次会った時は“彼女を家に送るのは当たり前”とか言ったりさ!」
「ん~…う、うん」
「ね、超~怪しいと思わない!?
これ、双子とか…木塚くんが二人いなきゃ話繋がらないよ!」
あたしはそう言うと、思わず目の前のテーブルをバシン!と叩く。
…けど、叩いた直後に他のお客さんからの厳しい視線が突き刺さる。
…う。
このクセ、早く直そう。
そう思って静かに直樹に目を遣ったら、直樹が難しそうな顔をして言った。
「…考えすぎじゃね?」
「そんなことない、」
「ただの気まぐれ?とかそんなのでしかないと思うけどなー」
そう言うと、オレンジジュースを飲み干す。
…やっぱ、そんな簡単に信じてくれないか。
あたしはそう思ってため息を吐くと、残りのチーズケーキを完食した。
しかし、そんな姿を…
「……」
あたしの真後ろで、“龍也”が背を向けて聞いていたとは知らずに…。