【完】狂犬チワワ的彼氏
…でも智輝さんは、妃由さんがいなくたって他にも彼女がいっぱい居るじゃんか。
俺はそう思いながらなんだか納得がいかないけれど、まさかそんなことを言えるわけがないし。
俺の失敗で不機嫌になっている智輝さんに、今はとにかく謝るしかない。
だけど俺が落ち込んだように見せかけて謝ると、そのうち智輝さんがため息交じりに言った。
「…ま、いいけどな」
「!」
「俺には他に彼女なんて腐るほど居るし、別に拓海にとられたらとられたで気にしないから」
そう言うと、一つ大きなアクビをする。
…当たり前だ。
智輝さんは女にだらしなさすぎる。
俺は智輝さんの言葉にそう思うと、その心を奥に押し遣って呟いた。
「…ありがとうございます」
けど…
「…っつかマジで、遣えない弟だなお前」
「!」
代わりにそんな言葉を俺に吐き捨てると、智輝さんはスタスタとリビングを後にした。
…俺は智輝さんの召使いじゃないのに。
だけどその思いは智輝さんに届くはずもなく、俺は急に独りになったリビングで深くため息を吐いた。
……今頃妃由さんは、拓海さんとどうしてるかな…。