偽の愛などいらない
結月side
車の中ではお互い無言で何もはなさなかった。
家に帰るまでの時間が長く感じた。
「着いたよ」
「はい。」
昔ながらの平屋のおばあちゃんの家。
結婚するということは、この家とも別れなのかもしれない。
「そうだ。結月、これ書いておいて。」
そう言って渡されたのは婚姻届。
本当に結婚するんだ。
「分かりました。」
葵さんのところにはもう、全部書いてあって私の名前などを書くだけだった。
「あの、この結婚に愛はないんですよね?」
声色を変えずにきいてみた。
「え?」
「だって、葵さんの“好き”は過去形でしょ?」
「そうだね。」
そう、
彼は私を見ていない。
「なんで、私なんですか?お金持ちのお嬢様でもよかったでしょ?」
「君のおばあさんの、会社と繋がるためだよ。」
そうか、私は良く知らないけど一応会社を持っているんだ。
これは、政略結婚だ。
それ以外のなんでもない。