domino
 こんな時にあの声は聞こえてこなかった。
 「何で何も教えてくれないんだ。」
 そんな疑問が頭を過ぎったがその答えはすぐに出た。
 「わかった。昨日出たポルノのDVD買いに来たんでしょ。だったら、こっちですよ。」
 ごく自然に彼女は僕の手首を掴んで、DVDコーナーへと引っ張っていった。ちょっと手首が痛かったが、彼女の一生懸命な仕草がとても可愛かった。
 目の前にはDVDがこれでもかと言うくらいに山積みになっている。その多さにあっけに取られていると、彼女が僕の目の前にDVDを取って差し出した。
 「はい。これですよ。CDコーナーにDVDは置いてないですよ。おっちょこちょいなんですね。」
 「すみません。」
 軽く会釈をするような感じで思わず謝ってしまった。
 「何で謝るんですか?やっぱり面白いですね。」
< 147 / 272 >

この作品をシェア

pagetop