domino
 そんな静かな公園に誰かやって来る気配がした。
 「なんか知らないけど、鞄拾うなんてラッキーじゃね?」
 「だよな。たまたま、万引きしに行ったら鞄が落ちていましたじゃ、楽すぎてあくびが出ちゃうよ。」
 “鞄”と言う単語が耳に入りその会話に耳を澄ました。
 「ホント。ホント。でも、この鞄鍵がかかってんだよな。きっと、いい物入っているぜ。そこの公園で壊して中だけいただいちゃおうぜ。」
 そう言うと、3人の男たちが公園に入ってきた。その男たちの持っている鞄を凝視した。
 「僕の鞄だ。」
 「間違いない。あのガンダムのキーホルダーは間違いなく僕のだ。」
 でも、彼らに声をかける勇気がなかった。不良には学生の頃から泣かされてばかりな僕には、ただ遠くから見ているしか出来なかった。
 「どうしよう。どうしよう。」
 男たちは何かを探しているようだった。
 「これなんか、良くね?」
 そう言った男がどこからか鉄パイプを持ってきた。
 「良いじゃん。それなら一発でしょ。」
 どうやら、鉄パイプで鞄の鍵を壊すつもりらしい。それを見て、僕は彼らの所へ行くしかないと思った。
 「あんなので殴られたら、鍵はおろか中のDVDまで割れちゃうよ。」
 男たちに走って向かった。
すると、そんな僕に気が付いた男たちがこっちを睨みつけてきた。僕の走りは男たちに近くなるにつれゆっくりとなり、最後にはトボトボと歩いて近づいた。そして、情けなく声をかけてみた。
 「すみません。」
 男たちは一斉にすごい形相でこっちを睨みつけてきた。
 「怖い・・・。」
 そう思ってももう遅かった。
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