domino
 「友里。ちょっといいかな。」
 少しふざけて僕に話しかけてきた彼女に、真剣な顔つきをさせられている僕が話しかけた。

 「なんだ。何を話す気だ。」

 そう思っても勝手に口から言葉が次々に出てきた。
 「もう、レースに出るのはこれで最後にしてくれないか?」
 急にそんな事を言われて彼女は戸惑っていた。
 「どうしたの?急に?」
 彼女にとって、レースは生活の一部になっている所があった。それを急に最後にしてくれと言われても彼女はどう答えて良いかわからなかった。
 「実は前々から考えていた事があるんだ?」
 僕の理解もすでに超えていた。僕の中にいる別の意識はいったい何をしでかすのか、不安でしょうがなかった。でも、僕にはどうする事も出来なかった。そんな自分に息苦しさを覚えた。
 「レースが終わったら、僕と結婚してくれないか?」
 あまりに急な僕のその言葉に彼女は止まっていた。その言葉を聞いた僕も止まっていた。確かに彼女と結婚できればいいと漠然と考えてはいた。でも、僕は自分でその言葉を彼女に伝えたかった。こんな誰かわからない意識に勝手に話してほしくはなかった。
 でも、そんな僕の気持ちを彼女は知る事もなく、しばらく呆然とした後にゆっくりと頷いた。
 「本当に?いいの?」
 頷いた後にもう一度確認の意味で僕に聞いてきた。
 「もちろん。」
 僕の顔が勝手に笑顔になった。僕の手の出せない所で、大事な話は進行してしまった。
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