domino
 周りにもはっきり聞こえる位大きな音で、僕の腹が空腹を伝えてきた。気恥ずかしさもあり、僕は弁当売り場に足早に向かった。弁当をレジに持っていくと、昨日の店員だった。
 「いらっしゃいませ。あ、昨日はどうも。」
 軽い口調で話しかけてきた。僕もそれに合わせる感じでこう返した。
 「定期券、取りに来たそうですね。どんな方だったんですか。」
 少なくとも彼女の容姿については十分なほど知っていた。でも、敢えてそう聞いてみた。
 その言葉を待っていました、と言わんばかりの満面の笑みで店員は話し出した。
 「それがすごく綺麗な人だったんですよ。」
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