domino
 でも、そんな事はいっさい知らない感じで聞いてみた。
 「本当ですか。いいな。僕も会いたかったな。」
 少ししらじらしい感じにも思えた。
 「うちのコンビニ、最近出来たばかりなんですけどね、彼女よく来ますよ。ほとんど、毎日って感じで。お客さんの事を気にしているみたいだったので、今度会ったら来た事伝えておきますね。」
 こうしている間にもひっきりなしに客が出入りしていた。
 すると、店員が何かに気がつき言葉を止め、レジを出てある客の所に向かったようだった。しかし、僕からは死角になっていて誰かはわからなかった。
 「お客さん、こちらですよ。」
 そう店員が後ろから話しかけてきた。振り返ると彼女がいた。あまりの事に僕はしばらく何が起きたか理解できずにいた。
 僕が何も話さなかったせいもあるかもしれないが、彼女の方から話しかけてきた。
 「はじめまして。昨日はありがとうございました。あ、私、鈴木、鈴木友里って言います。」
 明るくはきはきした口調で挨拶された。しかし、あまりの事に呆然としていた僕はぶっきらぼうな感じで答えてしまった。
 「あ、大河内です。」
 その言葉を発してはじめて、僕は元の世界に帰ってきた。
 「なんて話し方だ。これじゃ感じ悪いじゃないか。」
 しかし、そう言った時にはもう遅く彼女の瞳は潤んでいた。その彼女の瞳を見ていると耐えられなくなり、僕は彼女にこう伝えた。
 「ちょっと、用があるんで。」
 そう彼女に伝え、弁当を持ってコンビニを出た。
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