TEARS【~君色涙~】
そんな加奈子さんの姿を見て、私の心臓が大きく音を立てた。

さっきまで強ばっていたはずの力がいつの間にか抜けていく。


「……」


……知らなかった。

広瀬先輩と加奈子さんて、“幼なじみ”だったの…?


二人がそんな間柄だとも知らずに、私は……



「なんだ、そうだったんだ…」


先輩に渡すはずだったプレゼントを見下ろして、思わずポツリと呟く。


「……」


先輩……


先輩は――片想いなんかじゃないよ。


だって今見た加奈子さんの顔、あの日見た先輩とおんなじ表情…してたもん……。



「良かったね、先輩…」


良かった、二人が両想いだって分かって。

それを知らずに告白していたら、ただ自分が惨めな思いするだけだったもん……。



そう思ったら視界が白く滲んで見えなくなりそうで
私はとっさに目を瞑ると、持っていた紙袋をギュッと抱きしめた。
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