TEARS【~君色涙~】
「1個食ってみていい?」

「うん。手作りの生チョコだから、美味しいかどうか分かんないけど……」


不器用ながらも頑張って作ったチョコ。

それを1個、隼人がパクっと口に入れる。


「うん。マジでうまい。めちゃくちゃうまいよ」


1個どころか、3個も食べてしまった隼人。


そんな隼人を見て心が救われると同時に
私は紙袋から先輩にあげるはずだったバレンタインの箱を取り出すと、中を開けた。


「え、それ…食うの?」

「うん。取っておいてもしょうがないし、もったいないから」


用意しておいたピックで、手作りのチョコを1個ずつ、つまんでいく。

黙々と口にしながら…先輩にも書いた手紙を開けてみた。



“入学した頃から広瀬先輩のことがずっと好きでした。もしよかったら私と付き合ってください”



カードには、先輩への想いを綴ったメッセージ。


それを黙って見つめながら、静かにポロっ…と目から涙がこぼれ落ちた。



「……」



先輩のために作ったチョコは


甘くて苦い――切ない味がした。
< 123 / 440 >

この作品をシェア

pagetop