TEARS【~君色涙~】
「あーもう隼人のばか!恋なんてした事ないから分かんないよ!」
もどかしさから、ベッドにうつ伏せた私は唐突に足をバタつかせる。
ひとしきりもがいた後
脱力したようにクッションへ顔を突っ伏すと、ポツリと呟いた。
「先輩。もしかしてもう彼女が居るのかな。だからダメだったのかなぁ…」
あ~ぁ、私ってばなんて無謀な恋しちゃったんだろ。
そもそもファンまで居るような人だもん。
とっくにもう誰かのものに決まってるよね……。
先輩の彼女、かぁ……
もし本当に居るとしたら、どんな人なのかな。
美人系?可愛い系?(それともまさかのお色気系?)
大勢いるライバルの中から、先輩を振り向かす事ができるその人は一体、どんな女の子なんだろう。
(いいなぁ、きっと相思相愛なんだろうな……)
いつの間にか、うとうとしだす頭でそんなことを思いながら、
次第に重たくなっていくまぶたの裏側で
今日フェンス越しに見た広瀬先輩の姿形が浮かんでくる。
「……」
あの時。
ほんの一瞬でも先輩は私を、見てくれたと思った。
気付いてくれたと思ったんだ。
なのに、今はなぜか
本当は別の誰かを、見ていたような気がして―――…。