TEARS【~君色涙~】
電話…


「部活終わったらさ、毎晩栗原に電話するよ。今度はちゃんと約束守るし」

「……」

「…だめ?」


終始黙り込む私に、少々申し訳なさそうにしてこっちを見下ろしてくる隼人。

そんな隼人を見て、私はブンブンと首を横にふった。
 

「ううん全然。だめじゃないよ。嬉しい」

「……」

「電話、楽しみにしてるね!」



直接会って話せないのは正直寂しいけど…
隼人の声が聞けるだけで十分だと思った。


人目もはばからずお互い見つめ合い、どことなく良い雰囲気が流れたあと

私の返事を聞いて安心したのか、一足先に自分の教室へと戻っていった隼人。


そんな隼人を見てユカリがハァ?といった顔で悪態をつく。


「…なにあれ?ほんとに隼人?デレデレしちゃって。あんな隼人見たくなかったわぁ~」

「(デレデレ…?)ごめん、黙ってて」

「まぁ、それはいいんだけど。優衣ってばほんとに良いの?隼人なんかで。広瀬先輩のこと諦めたからってヤケになってない?
あいつ背だけは無駄にデカくなってるけど、中身はしょーもない、ガキんちょのまんまだよ?」


ユカリさん…それはさすがに言い過ぎなのでは…

隼人が気の毒にさえ思えてくる。


でも広瀬先輩のことがあって、隼人に気にかけてもらうことがなければ、
私も今そんなイメージのままだったかもしれない。



(先輩を好きになったのにもちゃんと、意味があったのかな……)



そう思ったら今までの事もなんだか救われた気がして、私はニコッと笑ってみせた。


「うん、いいの。隼人で」

「?」

「隼人がいい」


付き合うなら絶対、年上で大人の男の人でなきゃと豪語しているユカリには、
同い年の隼人は少々子供っぽくて物足りなく見えるかもしれないけど…

私にとってはすごく頼りになる、優しくて男らしい人に思えているんだよ。





その日の夜。


勉強机の前で、私は手元のスマホとひたすら見つめ合っていた。

画面の時間は既に夜の7時半を差していたものの、いまだ隼人からの着信はない。


「……」



…隼人から電話まだかな。

練習、長引いてるのかも。


そうだ、いっそ私から電話かけちゃおうかな!?


待ち切れず、自分から電話してみようと思い立ったとき

ようやく隼人から着信が掛かってきた。
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