TEARS【~君色涙~】
『……』

『栗原が思ってるよりも多分、俺の方が栗原のこと好きだと思う』

『え…?』

『体の節々が痛くて寝れなかった日も、実は毎晩栗原のこと考えてた』


お互い顔は見えないけど、どこか照れくさそうに話して教えてくれた隼人。


成長期で隼人の体が痛かった日。

それはまだ、私が隼人を好きだと自覚する前だ。


お互いクラスが離れてしまったことで1ヶ月くらい会えなくて。

そんなときも本当は毎晩私を思ってくれていた隼人を想像したら、とたんに目の奥が熱くなった。



『…栗原、もしかして泣いてる?』

『うん、嬉しくて』



隼人……。


去年の今頃は

先輩のことで泣いてばかりいて。


その1年後、まさかこんな幸せな時間が待ってるなんて夢にも思わなかった。


もしかしたら私、人生で今一番幸せかもしれない。





それから1時間くらい、私は隼人と電話で話をした。

自分のクラスのことや、隼人のクラスのこと。


たわいもない会話は今までと変わらず…

でも、どこかちょっと良い雰囲気で


自然と沈黙が訪れれば
お互い、中学生ながらにも甘い言葉を囁きあった。




時計が夜の9時を回りそうになったところで、お互い電話を終えることにする。



『じゃあまた明日。学校でな』

『うん、おやすみなさい』

『あ、栗原ちょい待って』

『?』


通話を終わらせる瞬間はどうしても名残惜しくなってしまうので
この際いさぎよく電話を切ろうとしたら、いったん隼人に止められてしまった。


不思議に思いながらもジッと待っていると、しばらくして隼人が電話を通じてこう呟いたんだ。



『おやすみ。優衣』



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