TEARS【~君色涙~】
すぐ側の街灯に照らされてか、そこには少し赤くなったようにも見える隼人の顔。

ポカンとする私の視線から逃れるかのように、隼人がパッと目をそらした。


「んじゃ、俺帰るわ」

「えっ、もう!?もう帰っちゃうの?」


なんで?

せっかくふたりっきりで会えたのに…。

もっと一緒にいたい。


そう思ってとっさに隼人の腕にしがみつこうとしたら、余計に顔を背けられてしまった。


「つかこれ以上はマズい…」

「え?」

「いや、なんでもねーし!」


ゴニョゴニョと何か一人でぼやいていたかと思うと、
なぜか気を持ち直したように真顔で私を見下ろしてきた隼人。


「また明日も来るから」

「!」

「栗原の迷惑になんねーなら、だけど」

「ううん全然!迷惑なんかじゃないよ。また明日も来てほしい」


嬉しさからつい、隼人の腕に自分の腕を絡ませようとする。

でも直前で止められてしまった。


「そ、それと」

「?」

「明日からはもうちょい、厚着してきて」

「……あ」

「風邪ひくだろ」

「うん、わかった」


私が素直にうなずいてみせると

あっさり「じゃあ…」とだけ言って、どこか急ぎ足で暗い夜道の中を走って帰って行ってしまった隼人。


その後ろ姿が見えなくなるまで、私はいつまでも両手を振り続ける。


「……」



隼人…


部活で疲れてるのに

また明日も会いに来てくれるなんて。


私が風邪引かないように心配までしてくれるし

やっぱり隼人は優しいな……
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