TEARS【~君色涙~】
「ま、間に合ったぁ…」

「8時25分。ぎりセーフ…」


30分のチャイムまでには何とか校門をくぐり
私と隼人は二人して玄関に滑り込むなりゼェゼェと息を吐く。

それでもすぐにこの後始まるホームルームがあり、
急いで階段を駆け上がろうとしたところで、唐突に私の足がピタリと止まった。


「…どした?行かねーの?」

「えっと…、あっ、トイレ!
ちょっとトイレ行こうかなって。ほら、髪とかボサボサで直したいし。
だから隼人は先に教室行ってて」

「はぁ?…便所なんて別に、朝礼終わってからでいいだろ」

「だって……」


どう見ても理由はトイレではなく、
明らか教室に向かうのをためらった様子の私に、隼人が盛大にため息をつく。
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