TEARS【~君色涙~】
「だって、なんだよ…?」

「だ、だって…もし私と隼人が遅れて一緒に教室でも入ったりしたらさ、皆に誤解されるかもしれないじゃん…!」

「……」

「もしかしたらその、広瀬先輩にだって…」


自分でも自意識過剰だと思う。

そもそも、一度だってまだ話せた事のない私が誰と一緒に居ようと先輩は気にも留めないだろうし、
彼女だって居るかもしれない。


それでも先輩に知られてしまう事を無意識に拒んだ私に、
隼人は全てを理解したかのように目線を下へと逸らした。


「あぁなんだ、そういうこと。てか、まだやっぱ諦めてねーんじゃん、先輩のこと」

「……」

「じゃあ俺、先行くわ」


隼人はそれだけ言うと、ポケットに手を突っ込んだまま、
1段抜かしで目の前の階段を駆け上がっていく。

そして角を曲がり、姿が見えなくなったあと、しばらくして上から聞こえてくる足音がピタリと止んだ。
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