TEARS【~君色涙~】
………


「藤原が本当にそこ行きたくて西高目指すんなら別に構わねーけど…
ただ俺と同じ高校行きたいからっつ理由だけでそこ決めんのは、さすがに止めとけよな」


まさか隼人がそんな言葉を口にしだすとは思わなかったのか、少し戸惑った表情で藤原さんがこう詰め寄る。


「え、ちょっと待って。隼人は私が一緒の高校ついてくるのが嫌だって言いたいの?」

「いや、そうじゃなくて。
俺を基準に自分の将来のこと決めない方がいいんじゃねって事。こんなはずじゃなかったってあとあと後悔でもしたらどうするんだよ?俺、責任とれねーし」

「……」


まるで突き放すようなことを言われ、とたんに黙りこんでしまった藤原さん。


でもその表情は明らか不満に満ちていて、
そんな藤原さんを諭すかのように、隼人は妙に落ち着いた口調でこう伝える。


「つまり俺が言いたいのは、そういうのは相手が行くからそこにするんじゃなくて、本当に自分がちゃんと行きたいところにしろよな?」

「……」


隼人のその言葉に、藤原さんはまだどこか納得いかない顔を示しつつも、微かにコクリと頷き返していた。

するとしばらくして、その一部始終を一緒に見ていたみーちゃんが感心したようにこう呟く。


「へぇ、あの隼人が少しはまともな事言うようになったじゃん」

「……」



“そういうのは相手が行くからそこにするんじゃなくて、本当に自分がちゃんと行きたいところにしろよな?”



…なんでだろう。

自分に向かって言われたわけじゃないのに。


藤原さんを伝って

遠回しにも、今ここにいる自分に向けて言われているような気がした。
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