TEARS【~君色涙~】
デートみたいじゃない…?


「い、いきなりで心の準備が…」

「え?」


――!

どうやら心の声が漏れてしまったらしい。

ガタゴト揺れる電車の中、ふと隣で顔を向けてきた隼人に私はハッと我にかえる。


「ううん!てか今日土曜なのに電車混んでる」

ね!

と、言いかけたのと同時に急ブレーキがして、私は思わず隼人にしがみついた。


「ご、ごめん隼人…」

「あ、いや俺は平気だけど」

「……」

「とりあえずどっか座る?席空いたみてーだし」


あ……

電車がホームに到着すると大勢人が降りていき、隼人が空いた端っこの席に座らせてくれた。


「隼人は?座らないの?」

「俺はいいよ。男だし」

「へ、なにそれ(笑)」


男でも座っていいのに…。

そんな事を思いながらも、私はチラ…と周囲に目をやる。


「……」


休日ということもあってか、電車内はこれからおでかけに行く様子のカップルでいっぱい…。


(…もしかして今私たちもそういう風に見えてるのかな)


付き合っていた頃には一度も果たせなかったデート。


学校見学のためとはいえ、内心はどこか浮き足立ってしまう。

一方で、前に立つ隼人は窓の景色でも眺めているのか、ひとり遠くの先を見ていた。
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