TEARS【~君色涙~】
「思い切って声かける?」

「えっ、でももしかして一緒に来てるの彼女かも」

「そんなの分かんないじゃん。ただの女友達かもしれないよ?」


ただの女友達…

それって私の事?


確かに間違っちゃいないけど…ちょっとへこむ。


チラ…と隣を見上げると、隼人は気付いていないようだった。


(あの子たちも今ここに来てるってことは、きっと隼人と同じ西高志望だよね…)


いずれは同じ高校に通うかもしれない、他校の女子生徒が隼人を見て何か話してる。

それだけでどうしようもなく、胸がザワザワとするような焦りと嫉妬心にさいなまれそうになった。




一人そんな気持ちを抱えながらも、隼人と一緒にぞろぞろと校舎を見学してまわっていく。


「……」


見慣れないせいなのか…どうにも変な感じがする。


入ってみた感じはそれほど中学と変わらないけど

部活動をしている人たちの中にはメイクや髪を染めてる人もいて、それだけで一気に大人の階段をあがっているように思えた。


何より、来年の今頃にはもしかしたら隼人もここで新しい高校生活を送っているかもしれない。

そう思ったら急に、何だかとてつもなく言いようのない寂しさが込み上げてきたんだ。





その後。

学校見学も無事終わり、私は隼人を残していったんお手洗いへ。

少し経って女子トイレからパタパタと戻ってきたとき



「あの、どこの中学ですか?ひとめぼれしました!」



ここより先の離れた廊下で、さっき隼人を見て話していた女の子がいたんだ。
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