TEARS【~君色涙~】
しばらくして、私はようやく隼人の前へと姿を現す。


トイレへと行ったきり戻ってこない私には気がついても、さっきのやり取りを見られていた事までは気づいていない様子。


「ずいぶん遅かったな。優衣も腹痛?」

「……ううん」


隼人の言葉に私は怒る気力も沸いてこず、ただ首を横に振る。


“誰とも付き合う気ない”


「……」


私、なんてバカなんだろう。


今日がデートみたい、なんて浮かれて。


そんな事を思う間にも、隼人はずっと先を見据えていたのに。


「じゃあ、帰るか」

「うん……」


自分から別れを告げておいて

それでももしかしたら……


もしかすれば多分きっと


ーー隼人はまだ私を好きでいてくれてるんじゃないか…なんて。


一体何を根拠にそんな都合の良い考え、思い浮かべていたの?
< 317 / 440 >

この作品をシェア

pagetop