TEARS【~君色涙~】
行きの電車では浮き足立っていた気持ちも、今ではすっかり影を落としていた。


改札を出て、家までの帰り道。

どこかたどたどしく後ろをついていく私に、前を歩いていた隼人がふと足を止める。


「優衣、どした?」

「え?」

「雨、降ってっけど。傘ささねーの?」


あ……


言われて顔を上げれば、空にはポツポツと降りだした雨。

持っていたはずの傘も今は見当たらず、私は手ぶらのまま笑ってみせる。


「…電車に、置いてきちゃったかも」

「……」

「で、電話して取りに戻ろうかな」


と、急いでリュックからスマホを取り出そうとしたとき

やがて本降りになってきた雨が一瞬、止んだ。


気づいて顔を上げると、そこには傘をかざして立つ隼人。


「俺の傘入っていけば?」

「……」

「そのままだと風邪ひくだろ」



でもこれじゃ相合い傘だし……


隼人の本音を知ってしまってか、断ろうにも降り止まない雨。


困った末、コクリと頷いた私は大人しく隼人の傘に入れさせてもらう。
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