TEARS【~君色涙~】




その後。

私はコーヒーチェーン店の一つである、かの有名なスターブックスにいた。

通称スタブ。

もちろん中学生の私にはどれも高級品で、めったに来たことがない…
というか今日初めて店内に足を踏み入れてしまった。


「……」


つ…ついに私も念願のスタブデビューを果たす時が来るなんて。

しかもソファがふっかふか。


こんなの初めて……


そんな事を考えながらも、私が今大事そうに抱えているのは、ビニール袋に入れられた二冊の参考書。


店内の雰囲気とは似ても似つかわしくないほど、どこか落ち着かない様子で一人ソワソワしながら待っていたら…

しばらくして、二人分の飲み物を手に持ったマヤさんがやってきた。


「おまたせ~!優衣ちゃんフラペチーノでもいい?」


そう言って、マヤさんが買ってきてくれたのは
美味しそうなホイップクリームが上に乗っかった新作フラペチーノ。

あ、これ高いやつだ!


「すっすいません!これ高かったですよね!?」

「あは、平気平気。そのためにバイトしてるから(笑)」

「……」

「優衣ちゃんスタブ来るの初めてなんでしょ?なら遠慮しないで飲んでみて」


そうマヤさんに勧められてしまい…、とりあえず私は大きめのストローに口をつけてズズッ…と飲んでみる。

お、美味しい……(涙)


って、感動してる場合じゃなかった。



「…あ、あと参考書のお代も後で絶対返しますので」


と、妙にかしこまった口調で頭を下げる私に、目の前に腰かけたマヤさんは一瞬ポカンとしたかと思うと、すぐにあどけない顔で笑った。


「あはは、いいよいいよ。弟がいつもお世話になってるお礼なんだから気にせず受け取って♪」
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