TEARS【~君色涙~】
「…優衣?」

「……」

「どした?何か困った事でもあったのか?」


困った事……あったよ。

でもそんな自分勝手なことやっぱり言えないから……


後ろめたさを感じてか躊躇してしまう私に、駆け寄ってきてくれた隼人。

でもそんな隼人の優しさが今は心苦しくて、こう話を切り出すことにした。


「こっ、困った事じゃないんだけど、実は隼人に相談があって…」

「うん、なに?」

「志望校ね、やっと決まったんだ。ただ今の私の学力だとまだ合格できそうになくて。
それで隼人が良かったらでいいんだけど、梅雨の頃みたいに放課後図書室に残って、また一緒に勉強できないかなぁって……」

「……」






言っちゃった言っちゃった。

言ってしまった…。


告白できたわけじゃないし、自分でも回りくどい誘い方なのは分かってるけど、今の私にはこれが精一杯……


返事、なんて言われるのかな。


内心ヒヤヒヤする私の想いとは裏腹に、意外にも隼人はあっさり頷いてくれた。


「いいよ」

「!ほ、ほんと!?いいの?」

「うん。部活も引退して空いてるし。いつがいい?」


う、うそ……やったぁ(?)

まさかこんなあっさり返事もらえるとは思わなかった。


も、もしかして隼人も私の事…!


でもその喜びはつかの間だった。


今にも飛び上がりたいのを必死に押さえていたら、隼人がこんな事を口にしたんだ。



「なら弘毅たちにも声かけてみっか」

「!」

「優衣は?橋本と木下だっけ?」


あ、あれ…?


もしやこれって皆で集まって勉強したいとか思われてる?

確かに前回はそうだったけど……


「んじゃ今、弘毅たちも呼んで…」

「ま、待って隼人!」


危うく皆を呼びに行きかけようとする隼人を、私はとっさに食い止める。

そしてわずかながらの勇気を振り絞って、こう打ち明けたんだ。


「は、隼人と…二人っきりがいい」
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