TEARS【~君色涙~】
「今日も放課後、隼人と一緒に勉強したい」

「え?」

「運動会には出れなくなっちゃったけど、座って勉強する分には足にも負担かかんないし。
なんていうかその、私が怪我したことで隼人との約束がうやむやになるのは嫌だなぁって」

「……」

「だめかな」



最後は顔色を伺うようにして見上げると、隼人は少しも迷うことなく頷いてくれた。


「ダメなわけなくね。つーか、いつダメなんて話したっけ?」

「……」

「早くケガ治して、動けるといいな」



と、まるで幼き子を励ますようにしてポンポンと頭を撫でてくれた隼人。

この時どこかでずっと気がかりにも思っていた気持ちが解け、ようやく私の顔にも笑顔が戻った。





この日の放課後、隼人との勉強はこないだ以上に楽しかった。


もちろんお互い自分の勉強には集中するものの、タイミングを見計らったように隼人が笑わせてきたりして。

二人きりで静かなはずの放課後の図書室には、時おり隼人と私の明るい笑い声が響いていた。







「じゃあまた明日」


夕方の5時を過ぎ、校庭での部活動も帰る支度を始めた頃。

正門前で振り返ってバイバイしようとしたら、当然のように隼人も一緒についてきた。


「さっき送るっつっただろ」

「隼人、私ひとりで平気だよ」

「俺が心配なんだって。家まで送らして」

「……」

「優衣がちゃんと家に入ったのを見届けたら、俺も安心して帰れっから」



隼人……


優しくしてもらえるたび、心の奥で抑えこんでいた期待が膨らんでいく。

そんな事を考えていたら、隼人が有無を言わさず私の肩から通学カバンを外すと、そのまま背負って歩き始めてしまった。

私はそんな隼人にちょっとだけ気後れしながらも、やっぱり素直に甘えることにしたんだ。


「うん」
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