TEARS【~君色涙~】
隼人と、藤原さん……?


「呼ばれて付いて来たとこ悪いけどさ…俺いま他に人待たせてっから早く戻りてーんだけど…」


その話に反応して思わず息を潜めると、予感していた通り教室には隼人と、同じ委員である藤原さんが居るようだった。


中の様子を確かめようにも、曇りガラスと完全に締まっている引き戸のせいで分からない。



「待たせてるって栗原さんのこと?」

「…まぁそうだけど」

「じゃあ尚更行かせない」



そう言って、私の所へ行かせるのを阻んだ様子の藤原さんに、「は?」と言う隼人の声がした。



「尚更って、どういう意味だよ」

「そのまんまの意味。私、隼人のことが好き。だから付き合って」



え……


まさかこのタイミングで告げるとは思わなかった藤原さんの告白に、廊下で聞いていた私の心臓がドク…と音を立てる。


でもそんな私の動揺とは裏腹に、隼人は藤原さんからの告白にきっぱりとこう答えたんだ。



「ごめん。俺、藤原のことそういう目で見られない」

「……」

「…ほんと悪いけど、まじで急いでるから…」



納得がいかないのか、しばらくの間押し黙っている様子の藤原さんを残して、仕方なく教室を後にしようとする隼人。


え!?あっ、どうしよう、隼人来る…


霞んだガラス越しに隼人の影がふいに大きくなったのが見え、思わず焦ったとき

寸前で藤原さんの低い声がした。



「じゃあ元カノは?」
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