TEARS【~君色涙~】
「……っ」

「ただ、藤原が言う好きとは、またちょっと意味が違ってっかも…」






うそ…


本当に?


隼人も私を、好き……――?


その事実に思わず声が出そうになって、慌てて自分の口を手で塞いだとき、隔てた扉の向こう側で隼人が少し困ったように言った。


その言葉で私が顔を上げてみたのと同時に、中で藤原さんの問いただす声がする。



「は?どういう意味?
まさか好きを通り越して愛だとか、寒気するようなこと言うつもり?」

「え、いや、そういうわけじゃねーけど」

「……」

「ま、でも似たようなもんか…な」



と、まるで独り言のように言い直したかと思うと、隼人は自分自身でも確かめるように話し始めたんだ。



「優衣の事は…大切なんだ、今でも。困ってんの見たらジッとしてらんねーし、助けたい」

「……」

「ただ俺がそうするのは、優衣に見返りを求めてるわけじゃないっつうか……」



見返り……――?


思わず引っかかりを感じた私の気持ちを代弁するように、藤原さんがこう聞き返す。


「見返り?なら隼人は今、元カノとヨリ戻したいとは思ってないってこと?」

「まぁ…そうだな」

「じゃあ隼人にとって栗原さんは今、どういう存在なわけ?」



ドクン


ドクン……



とことん突っ込んだその問いかけに、心臓の音が次第に大きくなっていく。


教室の中では「どういうって…」と明らか返答に考えあぐねている様子の隼人の声がして



「……まぁ、なんつーか」



長い沈黙があり、ようやく答えが出たのだろうか

隼人の……その先へと続く言葉に私の全神経が集中する。


そしてこう言ったんだ。



「今の俺にとって優衣は、ほっとけない可愛い『妹』みたいなもんだから……」



< 397 / 440 >

この作品をシェア

pagetop