TEARS【~君色涙~】
その瞬間、思わず全身の力が抜け
支えていた松葉杖が片方、腕から滑り落ちた。


突然カタン!と廊下で響き渡った音に、「え?」と言う隼人たちの声がする。



「!優衣…」



どうしよう


青ざめてとっさに逃げようとしたのもつかの間

すぐに引き戸がガラッ!と開いて、隼人に見られてしまった。


教室の奥では、あの藤原さんが驚いたように目を見開いている。



「優衣、何で…」

「っご、ごめん…戻ってくるの遅かったから心配になっちゃって…大人しく待ってれば良かったかな」

「……」

「あ、あとこれ隼人のカバン…一緒に持ってきちゃった」



必死に言い訳を思い巡らせた結果、肩にかけていた隼人の荷物を思い出し、慌てて本人へと差し出す。


そして落っことしてしまった松葉杖をなんとか拾い上げると、急いでクルッと背を向けた。




「……ごめん隼人。私、今日は先に帰るね」

「……」

「また明日…」



やっとの思いでそう言って、隼人から逃げるようにこの場を後にしようとする。



「おい優衣、待てよ!」



でも松葉杖のままじゃ簡単にすぐ追い付かれてしまって

あとを追いかけて腕を掴んできた隼人の手を、私はとっさに振りほどいた。
< 398 / 440 >

この作品をシェア

pagetop