TEARS【~君色涙~】
答えのない問題
「はぁ~ぁ…」
あれから早1週間が過ぎた。
どこか慌ただしかった日常が終わり、普段の学校生活へと戻りつつある中
今日幾度と聞いたか分からない、盛大な溜め息をはいてくるユカリに、みーちゃんがウンザリした顔を向ける。
「だからねユカリ。何度も溜め息つくなって言ってるでしょ」
「だってさぁ。こないだの運動会、優勝どころかビリだよ?ビリっけつだよ?中学最後の運動会、ムカデ競争で最下位なんて…そりゃあ溜め息もつきたくなるよ」
と、いつもだったらこの時間、光の速さで口に運んでいくはずのおにぎりにも、全く手をつけられない様子のユカリ。
『最下位』
その言葉で、私も遠慮がちに動かしていた箸の手をピタ…と止める。
「…最下位?」
「そ!大体さ、隼人のせいだと思うんだよね。先頭で、しかもリーダーっていう超重要なポジションにいながら、アイツもぬけの殻みたいだったし」
今話している場所は学校の人気がない裏庭で、しかも私たちだけしか居ないのを良いことにユカリは言いたい放題。
みーちゃんがヤレヤレと言った表情で水筒にお茶を注ぎ始める。
「隼人に全部擦り付けるのもどうかと思うけどね。それより優衣は先週、病院行ってきたんでしょ?どうだったの?」
「あ、うん。おかげで順調に治ってきてるみたい。もう少ししたらギプスも外していいって」
「ほんと!?良かったじゃーん!」
愚痴りつつも、ちゃっかり話は聞いていたのか、ずいっと間に入ってきたユカリ。
その拍子で水筒のお茶が吹きこぼれてしまい案の定、みーちゃんに怒られていた。
そんな二人のやりとりに苦笑しつつも、私はふと真顔にかえる。
(……最下位、だったんだ…)
今初めてその事を知ったせいか、まさに寝耳に水といった心境。
先週の土曜に行われた運動会。
実のところを打ち明けると、私はその日学校を欠席した。
といっても体調を崩したというわけではなく
その日は病院で足の治療を診てもらいに行っていたから…
ずる休みしたつもりはなかったものの
怪我をしたことで運動会には元々参加できなかった事もあり、当日は病院へ行くのを理由に休んでしまった。