TEARS【~君色涙~】
「…そこまで言われるとなんか照れっけど、ありがとう」

「……」

「優衣こそ、この前の期末で30番内に行けたんだろ?すげーじゃん」


え、知っててくれたの?

って、実はこないだ図書室で自分から自慢してしまったからなんだけど…


でも隼人に言われるとすごい嬉しい。


「分からない問題は隼人が全部教えてくれたおかげだよ。私こそありがとう」

「……」


一年の最初は、まさかこんな風に隼人へ感謝する日が来るなんて思ってもみなかったな。

もしもあの頃に戻れるとしたら、過去の自分に教えてあげたい。


なんて、一人しみじみと考えていたら隼人がボソ…と口を開いたんだ。


「あのさ。俺が西高に受かって、優衣も東高に合格したらさ……」

「……」

「って…やっぱいい」


と、何やら自分で話を振っておいて止めてしまった。


「え、ちょっとなにその言い出しといて止める的なの…流行ってんの?」

「いや、流行ってねーけど。今じゃねーかなって…」


今じゃないって…まぁいいけど。

っていうかこんな会話、昔にもしなかったっけ…


「受験、頑張ろうな」

「うん」


頑張る。

こうなったら隼人にだって負けていられない。


私は私で、頑張るんだ。






終業式。

教壇に立つ校長先生の長話を聞きながら、あともう少しで今年も終わりか…なんて考えていたら

藤原さんと目が合った。



「!」


思わずギョッと肩を怯ませるも、すぐに藤原さんがプイと目をそらす。



「……」




“ねぇ答えてよ隼人!”



あの一件以来、藤原さんとは和解したわけではないものの、一切何も言ってこなくなった。
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