TEARS【~君色涙~】
私、なにを期待していたんだろう。


一度目が合っただけで浮かれて。


そんな事で

たったそんな事くらいで


広瀬先輩の気持ちが、そう簡単に加奈子さんから私に傾くなんてこと、あると思ってたの?






季節は梅雨に入ると
天候のせいもあってか、サッカー部が休みになる日も増えた。



今日も1日小雨が降りしきる中、

校庭では一人サッカーの練習に励んでいる先輩。


その様子を、放課後教室に残っていた私は窓からぼんやりと見つめていた。


「……」


でもそんな私に先輩が気がついてくれる訳もなくて、

聞こえるはずもないのに私は小さく名前を呼んでみる。



「……先輩」


こっち、見てくれないかな……






「……見てほしい」


ポツリと本音がこぼれたとき

私の目から、涙が落ちた。



「ぐすっ………」




声を押しころしながら一人泣いていると


ふいに足音がして、隼人が教室に入ってきた。
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