ピアノを弾く黒猫

贈り物









次の日。

大学の講義を終えたあたしは、大学を出る。





「優ちゃん」




聞き覚えのある声に、振り向く。





「生島くん」




生島聖(せい)くん。

あたしが話す唯一の男の人。

由香は彼氏と勘違いしているみたいだけど。

ただの友達。





「優ちゃん、昨日のコンサートお疲れ様」

「ありがとう。
だけど昨日は奈々恵さんのコンサートだよ。
あたしはただの伴奏しただけ」

「でも菱川奈々恵さんのコンサートに出られるなんて、優ちゃんが上手いって証拠だよ」

「あたしなんてまだまだだよ…」

「優ちゃん。
良かったらこのあと僕と…」

「優子さん!」





聞いただけで嫌な気分がするのは、1人しかいない。

昨日の、黒猫だ。





黒猫は大学の門の外にいて、あたしに向かって手を振っている。

皆が不思議そうな顔をして通り過ぎていくのを、彼は全く気にしていない。

隣にいる生島くんを見ると、ムッとしていた。







< 11 / 76 >

この作品をシェア

pagetop