ピアノを弾く黒猫
☆☆☆
部屋の中に置かれたピアノを弾きながら、あたしは考えていた。
何であたし、年下に告白されたんだろう?
「優子、ココア持ってきたわよ」
「あ、ありがとうお母さん」
ピアノを弾くのを一旦中断し、ココアのはいったカップを手に取った。
「優子、あの花束は?」
「あー…昨日の伴奏見ていた男の子からもらったの」
「へぇ、良いじゃない」
お母さんは花束を覗きこんだ。
「へぇ、白薔薇の…蕾、なのね」
「…どうしたのお母さん」
お母さんはカップを片手に首を傾げていた。
「白薔薇本来の花言葉は、尊敬とかいう意味があるのよ。
だけど蕾だと、少し意味が違うのよ」
「何ていうの?」
「…忘れちゃったわ」
お母さんはそのまま、部屋を出て行った。
あたしはただ、首を傾げるだけだった。