ピアノを弾く黒猫
第2章
無自覚
次の日。
あたしは大学内の階段教室内で、誰にもバレないよう溜息をついた。
あたしの溜息の原因は、つい1時間ほど前のことに遡る。
1時間前。
あたしは講義のため、大学内を歩いていた。
「優ちゃん」
「生島くん?」
突然木の影から出てきた生島くん。
少し驚いたけど、行動には出さなかった。
「…どうしたの?」
生島くんは怖い顔をしていた。
眼鏡の奥の瞳が、あたしを睨んでいた。
普段温厚で、滅多に怒らない生島くんなのに。
あたし、怒らせるようなことしたかな?
「昨日の男、誰?」
あ、黒田くんのこと言っているのか。
そりゃあ黒田くん怪しいもんね。
怪しむ気持ち、わかるよ。