ピアノを弾く黒猫
弾き終わったあたしたちは、お互い顔を見合わせた。
ふんわりと、黒田くんが笑う。
「嬉しいです、本当に。
優子さんとピアノが弾けて、本当に」
「あたしも楽しかったわ。
黒田くん、ピアノしていたのね」
「齧った程度ですよ。
優子さんには追いつきません」
「あたしと同じにしないでくれない?
あたしはプロのピアニストを目指しているのよ」
「優子さんならなれますよ!
俺が優子さんを、ずっと応援します!!」
にっこりと笑う黒田くん。
あたしも一緒に笑った。
「優子さんは、どうしてピアノを始めたんですか?」
「高校3年生の時、ピアノリサイタルに行ったの。
その時聞いたピアノの曲に感動したの。
幼馴染の家がピアノ教室を運営していて、そこに習い始めたのよ」
「そうなんですか!?
優子さんって幼い時からやっていると思っていました」
「良く言われるわ。
でもあたしが始めたのは、本当に最近なの。
ただ誰にも負けないように、努力は重ねたわ」
来る日も来る日もピアノに明け暮れて。
それまで熱心に何かをすることがなかったあたしを見て、お父さんもお母さんも納得してくれて。
中古だけど、この黒いピアノを買ってくれた。
中古でもそこそこの値段のあるグランドピアノ。
あたしは大事に大事に、使った。
命よりも大事なものだから。