ピアノを弾く黒猫
「どうしたんですか?
俺、優子さんのお母さんと会うの、初めてですよ。
それとも俺、そっくりさんいます?」
ニコッと笑う黒田くん。
お母さんは首を傾げながらも、笑った。
「きっと誰かに似ているんだわ。
確かにわたしたち、初対面よね。
初めまして。
優子の母の都(みやこ)です」
「黒田初夜です、初めまして」
ぺこりと、礼儀正しく頭を下げる黒田くん。
「初夜くんは、優子の彼氏かしら?」
「いや、違いますよ。
俺が一方的に優子さんが好きなだけです」
「く、黒田くん!?」
あたしは椅子から立ちあがり、黒田くんとお母さんに近づく。
お母さんは顔を真っ赤にし、口元に手を当てていた。
「まぁ、優子を?」
「はい。
この間優子さんが出ていたコンサートを拝見しまして。
お恥ずかしながら、一目惚れしちゃいまして」
照れたように後頭部をかく黒田くん。
お母さんもあたしも、何も言えずに顔を真っ赤にした。