ピアノを弾く黒猫
「優子は?」
「え?」
「優子は初夜くん好きじゃないのかしら?」
お、お母さん…。
あたしは何も答えずに俯いた。
今のあたしの顔、きっとトマトより真っ赤だわ。
「都さん、良いんです。
俺が一方的に優子さんを好いているだけですから。
優子さんから答えを聞くつもりはありません」
「優子、良い子捕まえたわね~」
まるで女子高校生のように嬉しがるお母さん。
別にあたし、黒田くんのことは別になんとも思っていないんだけど…。
それにあたしは今、恋よりも夢を大事にしたいから。
「初夜くん、もし良かったらご飯食べない?」
「え?」
「優子もきっと喜ぶはずよ。
優子、どうかしら?」
「……別に黒田くんが食べて行きたいなら、良いよ」
「優子ってば素直じゃないわね。
どう?黒田くん」
「……良いんですか?」
「ええ、大歓迎よ」
「じゃ、お言葉に甘えようかな」
黒田くんは人懐っこい笑みを浮かべ、お母さんと共にあたしの部屋を出て行く。
あたしはピアノにカバーなどをかけてから、2人の後を追った。