ピアノを弾く黒猫
第3章
癒される音
☆初夜side☆
優子さんの家で夜ご飯をご馳走になった俺は、夜道を歩いていた。
男性とすれ違い、目的地はもうすぐだ。
「黒田くん、かな?」
突然すれ違った男性に声をかけられる。
スーツを着ている、サラリーマン風の男性だ。
…俺の知り合いにサラリーマンはいないはずだが。
「黒田初夜くん、だな?」
「そ、そうですけど…?」
「ワタシは並木優介(ゆうすけ)。
優子の父だ」
「あ、優子さんの。
初めまして、黒田初夜です」
名乗ってもらったので挨拶をして、気が付く。
何で優子さんのお父さんが、俺のことを知っているんだ?
「我が家で夕食を食べたそうだな」
「あ、はい。ご馳走様でした」
「別に構わない。
また来てくれても構わない。
妻も喜んでいるからな」
優子さんのお母さんの笑顔が、浮かぶ。
優子さんに似た、綺麗な笑みだったな。