ピアノを弾く黒猫
「何で黙っちゃうのよ。
黙るのなら最初から言わないでよ。
生島くんは、黒田くんと知り合いなの?」
「僕じゃない」
「え?」
「僕はアイツと知り合いじゃない」
「じゃあ、誰から聞いたのよ」
「…奈々恵さんだよ」
奈々恵さん?
何で奈々恵さんと生島くんが知り合いなの?
「僕、バイオリン奏者を目指しているんだ。
前に教えてくれる先生が、奈々恵さんに会わせてくれたんだ。
それ以来、時々連絡を取っている」
そうなんだ……。
「奈々恵さんが、前に優ちゃんと黒田初夜が一緒にいる所を見たらしい。
それで僕に、優ちゃんに警告をしてほしいと言われたんだ」
奈々恵さん、黒田くんと知り合いなの?
そういえばこの後、丁度奈々恵さんと会う予定がある。
…聞いてみよう。
「ありがとう生島くん。
じゃあ、またね!」
「ちょっ、優ちゃん!?」
あたしは踵を返し、再び歩きだす。
生島くんの声は、届いていなかった。