ピアノを弾く黒猫
第4章
天才少年
☆初夜side☆
「何で優子さんにあんなこと言ったんですか!
奈々恵さん、聞いているんですか!?」
「うるさいわよ。
いくらここに防音対策が出来ているからと言って騒がないで。
飼い猫は飼い猫らしく、大人しくしていなさい」
俺はガタンッと椅子に腰かけた。
「本当のことでしょう?
黒田初夜が過去に天才少年だと謳われていたのは。
まぁ6年前の出来事だけどね」
「奈々恵さんは優子さんに何の恨みがあるんですか。
何で優子さんに対してそんな敵対心を抱くんですか。
優子さんにとって、奈々恵さんは憧れの存在なんですよ?」
「アタシにとっては、目障りでしかないわ」
煙草の息を吐きだす奈々恵さん。
俺はギュッと拳を握った。
「初夜。
あなたはアタシにとって忠実な飼い猫。
アタシのために、もう少し働いてくれるかしら?」
「嫌です。
俺はもう優子さんを傷つけたくないですから」
「…あなた、アタシにそんなこと言って良いとでも思っているの?」
良いはずがない。
俺が奈々恵さんに逆らえば、アイツらが困る。
でも、優子さんを傷つけたくない……。