ピアノを弾く黒猫
「い、生島くんはただの友達だよ…」
「ただの友達には見えないけどなー」
由香がニヤリと黒い笑みを浮かべた。
あたしは顔を手で覆って隠した。
「ゆ、由香こそ誰かいないの?」
「私、男に興味ありませんから」
「由香可愛いんだから。
もっと自信持ちなよ」
「私は良いの。
優ちゃんと生島くん見ていればね」
「ゆ、由香!」
そこまで言った所で奈々恵さんが出てきた。
奈々恵さんの大ファンの由香は、「じゃあね!」と笑顔で奈々恵さんの元へ行った。
あたしも手を振り返し、ホールの敷地から出た。
生島くんは、ただの友達だよ。
まぁ親しいけど。
決してカレカノという関係ではない。
生島くんは良い人だとは思うけど。
好きかどうか言われると…ねぇ。
友達として好き、とは素直に言えるんだけど。
恋、かぁ。
あたし、今まで恋と言う恋をしたことないからなぁ。
中学と高校はエスカレーター式の女子高だったし。
男の子と関わったのは、小学生以来。
生島くんは、本当に久しぶりによく話す異性だ。
でも、由香が期待するような関係ではない。
あたしも特にそれ以上望まないし。
生島くんもそれ以上の関係は求めてこないし。
生島くんもきっと、あたしのことは友達だと思っていると思うから。
恋なんて、
あたしにはまだ、遠い。