ピアノを弾く黒猫

好きな人









☆優子side☆




…何であたし、こんな所にいるのかしら?

あたしが今いるのは、古びた倉庫みたいな広い場所。

両手両足をロープで縛られ、口元にガムテープを貼られているから、話すことも動くことも出来ない。

今の状況、初めから整理しよう。







いつも通りあたしは、大学を出た。

そして向かう先は家ではなく、奈々恵さんの練習場所でもあるビル。

奈々恵さんに正式な海外留学のことをお話しようと思っていたのだ。

そうしたら、突然後ろから誰かに口元をハンカチか何かで押さえられて。

気を失って…気が付いたらここにいたわ。




見渡す限り、誰もいない。

口が動かせられないから、声も出せない。

誰か、あたしに気が付いて……。







「優ちゃん」




聞き覚えのある声に、あたしは反応した。

ただし、声の主は見えない。

口を動かしてみるけど、ガムテープは取れない。






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