ピアノを弾く黒猫
☆優子side☆
ホールを見上げながら過去を話した黒田くんは、あたしを見た。
宝石のように、その黒い瞳は輝いていた。
「優子さん。
俺、もう1度ピアノを弾きたいんです。
優子さんと、一緒に」
真剣な瞳に、あたしは頷いた。
「あたしも、黒田くんと連弾したい。
黒田くん、凄く上手いんだもん。
黒田くんと練習したら、あたしも上手くなりそうで!」
「優子さん。
良いんですか?
俺、一時期であっても、ピアノをお金でしか見れなかったんですよ。
ピアニストって、そういうの許さないと思うんですけど」
あたしは「うーん」と考えた。
「確かにそう言うの嫌うピアニストは多いかもね。
だけど、あたしは嫌わないよ。
だって黒田くんは、家族を守るためにお金を稼いでいたんでしょ?
借金を作ったのも、お父さんなんでしょ?
黒田くんは、悪くないよ。
それにね、あたし思うんだ。
一緒に連弾した黒田くんは、ピアノをお金として見てない。
あの時、黒田くんはあたしと同じよう、純粋にピアノを楽しんでいたよ。
過去に何があっても、あたしは気にしない。
あたしは、今の黒田くんが好きなんだから」
黒田くんは一瞬驚いた顔をして、やがてふんわりと微笑んだ。
「ありがとうございます、優子さん。
俺、あの時優子さんに楽譜をあげて、良かったです」
黒猫の艶やかな毛並みのような黒髪が、きらりと月の光を浴びて輝いた。