ピアノを弾く黒猫
「イテテテ……」
ソイツは鼻を押さえながら立ち上がった。
あたしと同じぐらいの背丈だった。
「あ、優子さんいた!」
ソイツはふんわり笑った。
どうやら完全にストーカーだったらしい。
あたしは思い切り、その緩んだ頬に掌を当てた。
バッシーンと良い音がする。
「イッテ!
何するんですかー優子さん」
「何するんですか、じゃないわ。
ストーカーを撃退したまでよ」
「ストーカー?誰が」
「アンタが」
「はぁ?俺が?」
あたしが叩いた頬を押さえながらオーバーに驚くソイツ。
どうやら無自覚ストーカーらしい。
「一緒に来て」
「え?
いきなりデートですか?
困っちゃうなー」
困っちゃう、と言いながらも嬉しそうに微笑むソイツ。
馬鹿としか言いようがない。